フランスの今回の猛暑で、まるで「左派がエアコンに反対してきたせいで人が亡くなっている」という物語が、実しやかに流通している。右派・極右が「普通の人々の生活を脅かす懲罰的エコロジー」というお得意のレトリックで猛暑の責任を左派に転嫁しているわけだが、これは大嘘である。
そもそもフランスは長い間、エアコンが必須な気候ではなかった。しかし昨年の熱波以降、緑の党も学校・病院・高齢者施設への冷房整備を求めるようになっている。それなのに十分な適応策が進まなかった最大の責任は、2期連続で政権を担ってきたマクロン政権にある。今回も政府が繰り返したのは「水を飲め」「アルコールは控えろ」といった自己責任的な呼びかけが中心だった。
しかも、この猛暑は気候学者が何十年も前から警告してきたものだ。驚くべきなのは「予想外だったこと」ではなく、2050年頃と想定されていた暑さが、2026年の時点でもう現実になってしまったことだろう。ペースが早い。それほどヤバい。
それなのに気候変動懐疑論を振りかざし、気候対策予算の削減を訴えてきた勢力が、今になって「エアコン推進」だけで主導権を握ろうとしているのは、かなり都合のいい話である。
もちろん、学校や病院へのエアコン設置は必要だ。しかし猛暑対策はそれだけでは終わらない。断熱改修、都市の緑化、労働時間の見直し、学校や病院の改修、都市計画や農業の転換たいった社会全体の適応策が必要だ。「エアコン賛成か反対か」という偽の二項対立にしてしまうことこそ、本質を見えなくしている。